2010年04月09日

個人の営業スキルと組織の営業力 〜続き〜

 前回の記事で、長くなるのであえて分けたポイントがあります。冒頭のマネージャーの発言
「マネージャーは同行するなりして範を示すべき」
これは、部下のスキルをどうやって伸ばすか、つまり組織の能力に焦点をあてた発言ではないのか?という点です。

これはそのとおりなのですが、その前に少し視野を広げる必要があります。組織には当然色々な人間がいます。営業スキルに関して、90点の人間もいれば、60点や20点の人間もいるのが普通です。これら個人の営業スキルを総和したものが組織の営業力なのか?組織の能力を高めるには個々人の営業スキルを高めるしかないのか?

 「イノベーションのジレンマ」の中で、クレイトン・クリステンセン教授は組織の能力の枠組みを「価値基準」、「プロセス」、「資源」に分類しています。マネージャーが部下に同行してそのスキルを高めようとするのは、マネージャーの時間という資源の使い方であり、この分類では「資源」に対する働きかけになります。しかし当然資源には限りがあり、マネージャーが部下の同行に割ける時間はごく限られたものになります。

望むと望まないとに関わらずマネージャーは多くの会議や報告などの作業、あるいはトラブルが起こった際の火消しなどに多くの時間を取られます。資源に対してインパクトのある働きかけができなければ、組織の能力に対する影響も多く望むことはできません。(だからといって不要とは全く思いませんが)

組織の能力を考えていく上では残りの二つにも着目する必要があります。

「価値基準」は組織が仕事の優先順位を決める際の基準です。わかりやすいところでは、シェアを優先するのか、利益率を優先するのかという、どちらか100%という答えががないものについて、どこで判断するのかを決めるための組織を貫く考え方になります。

「プロセス」は文字どおり、一定のインプットに対して企業が価値を産み出す過程を示します。日本の製造業では、作業のマニュアル化やラインの改善など、このプロセスの改善による組織能力の向上を得意としてきました。

日本の営業の組織では、過去長い間これらの枠組みに対する働きかけがなされることは希でした。良いものを作れば売れるという時代は、資源にさえ働きかけていれば結果が出た=組織の能力が伸びていたからです。
 
もう少しこのテーマで続きます。
posted by 徳田龍二 at 17:34| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

個人の営業スキルと組織の営業力

営業マネジメントに焦点を当ててコンサルティングをしていると、個人の営業スキルと組織としての営業力が混同されていることが非常に多いことに気付きます。

 ある時、営業会議の生産性について議論していると、一人の営業マネージャーが「会議でどういう指示を出すかも重要だが、部下が客先で実行できるかというと、スキルが足りなくてできないことも多い。マネージャーはそこを同行するなりして範を示すべきだ。それこそがマネージャーの仕事だ」ということを言い出しました。

 この方かなりアクティブな方なので、社内で会議しているくらいなら、その時間客先にいくべきだという思いがあったのだと思います。※同じようなことを経営層の方が言っているケースも多くあります。

 誤解していただきたくないのは、シンキングリードではこのような価値観そのものを否定するつもりは全くありません。営業には活動量もKKD(勘・経験・度胸)も絶対に必要ですし、個別の営業スキルを高めていくためにはOJTが最も効果的でしょう。

 ただ、素朴なギモンをぶつけてみると、

「個人が素晴らしい営業スキルを持っていたとして、競合企業にはその人以上の営業スキルを持つ人は全くいないと言えるんでしょうか?」

「その営業スキルは、お客様が貴社から買うかどうかを決める際の決定的な要因なんでしょうか?」


個人の営業スキルと組織の営業力はまったく別物です。市場が右肩上がりに成長しているのならば、個人個人が研鑽を重ねるだけでも業績を伸ばすことは出来るでしょうが、市場の伸びが期待できず、売っている商品自体の差別化が困難な場合はどうでしょうか?

こうした市場の前提条件や、個人の能力と組織の能力の違いなどを全く整理せず、社内で声が大きい誰かの価値観に合わせて組織が進む方向を決めてしまうと、その取組みは失敗するか、あるいは組織の状態を悪化させる方向に導く可能性が非常に高くなります。
 
営業改革などの取組を進める場合、先ずはプロジェクトの関係者がこの点を理解しておくことが重要です。
posted by 徳田龍二 at 15:42| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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