2010年06月13日

マーケティングと営業B

前回、マーケティング戦略と営業行動をリンクさせる方法の一つとしてフルコミッション型の営業組織を上げましたが、今回はもう少し発展した形をご紹介します。

それは、営業組織を機能別に細分化する事です。

これは外資系などで良く見られるスタイルです。例えば経営者的にマーケティング視点から、重点的に伸ばしていきたい商品があるとします。しかし、現実問題として、営業現場が売りたい商品は異なるケースが多々あります。
前に書いた様に、原則営業というのは、今の顧客に、今売れる商品を売りたがるからです。その原因も前回書きましたが、営業組織を機能別に細分化するという事は、例えばその商品の販売にのみ特化した営業組織を作ってしまうやり方です。当然、他の営業組織とは、別の価値基準を与え、評価基準も変更する必要があります。売上、利益では無く、対象商品の出荷本数で評価するなどすれば、当然行動が変わります。同様に、新規開拓専門。ラージアカウント(大手顧客)専門。既存顧客専門。といった様に、マーケティング戦略に従って、その行動を促す様な特定のミッションをもった組織を作っていくやり方です。プロダクト(製品)別、顧客別(業種、規模)、時間軸別(新規、既存)などの軸で別けるのが基本で、さらには、プロダクト別と、顧客別と二つの軸に訳けた上で、マトリクス型で全体の動きを統括する様な、少し複雑なオペレーションを実行している企業もあります。
「えっ!そんな事ならうちの会社もやっているよ!」という方も多いとは思いますが、感覚値で申し上げると日本企業の場合、形だけ組織を別けていても実態としては酷く中途半端という、お粗末な事をやってしまっている事が多いです。
要するに、組織のラベルだけ「大手専門」「特定プロダクト専門」としているが、評価基準などはどの組織も原則全部一緒で、どの組織も実績評価が中心。という様なケースです。これでは全く駄目で、結局現場は「何処に何売っても、売上があがれば良いんでしょ」という行動になってしまいます。極端なケースになって来ると、同じお客様に同じ商品を提案する為に、社内の営業組織が、反目しあう様な愚かな事象も発生しかねません。
但し、名前は上げられませんが、かなり理想に近い営業組織を作り上げている日本企業も確かにあります。例えばある企業では、特に営業スキルの高い20名ほどのスペシャリスト部隊を作り(全社では1000人位の営業マンがいます)新規開拓のみに特化して活動している企業があり、とても有効に機能していました。この部隊には売上を上げるどころか見積りを作成、提出する機能すら持たせて居ません。ただひたすら新規開拓をして、ひとまず接点を作る事だけがミッションで、見積りを提出する様な段階になると各事業部に所属する営業に引き渡します。
これが駄目な組織になると、新規開拓がミッションと形だけしておきながら、売上ノルマを持たせてしまいますから、当然、売上の上げやすい、既存客(新規開拓後の顧客)も手放そうとはしません。そうなると肝心な「売上の直ぐに上がらない新規開拓」は疎かになって行きます。この二つの組織の違いは歴然としていますね。

但し、この営業組織を機能別に細分化する方法もデメリットがあります。いわゆる「組織のタコ壺化」です。自分達は特定ミッションを持って動きますが、顧客側からすれば、あくまで全機能を持った企業体と付き合っている訳で、商品特化の営業部隊の例ならば「私はこの商品が売れれば良いので、他の事、後の事は、知りません」という態度では困る訳です。しかし機能を細分化してしまうと、「顧客が自分達が売るべき商品には興味が無いが、他の商品ならニーズがありそうだ」というケースでも「あいつら(他部門)に塩を送る様な行為をなんでやらなきゃいけないんだ」と考え、企業全体で見ると大きな機会損失を生んでしまうといった事態を生むのです。
この辺も経営者から見ると「何でそんな馬鹿な事を!」と「現場の資質」に問題あり。と結論付けてしまいがちですが、実際に、A商品の実績数字が高くて、B商品の実績数字が低ければ、B商品の営業責任者を叱責なり、はっぱをかけるのが普通でしょう。そうすれば当然、現場は「何であいつらに・・・」の思考回路で行動してしまうのは当然の結果なのです。これを避ける為に、「別の商品を売った場合も○%実績にプラスして評価する」とやる事もありますが、かなり複雑なオペレーションに成らざる負えません。複雑なオペレーションは組織運営上、別の負荷(基幹システムの大幅改修など)を高めますし、組織に与えるミッションというのはシンプルな程、成果を上げやすいという鉄則からも外れていきます。(折角組織を細分化して、それぞれのミッションを明確にする事で、全体として戦略的な動きを期待したのに元の木阿弥になるという事です)

さて、今まで二つ程解決策(フルコミッション型、機能別に組織を細分化)を提示してみましたが、どちらもメリット、デメリットが存在する事は解って頂けましたでしょうか。重要なのは、あえてデメリットがある事を理解しながらも、中途半端にやらない事です。くどいですが組織に与えるミッションというのは単純、明快が原則です。

私の経験則で物を言うと、有能な経営者の方というのは、現場のウソを見抜く事に長けています。組織というのは、既得権益が生まれ、組織防衛というベクトルが必ず働きます。なにか改革しようとすると、「そんな事をしたら社長・・・「顧客満足度が下がりますよ」、「モチベーションが下がりますよ」、「コストが上がりますよ」」・・・と必ず反発が出ます。有能な経営者であれば大体の「ウソ」は見抜く事が出来るのですが、こと「売上が下がりますよ」という脅しにだけは弱いものです。
また、営業役員も、営業マンとしての多くの実績を上げて来た方が多いですから、必ずしも組織論を知り、その構築能力に長けている方とは限りません。今まで自分が売上を上げてやり方こそベストと信じて疑わない人が多い為、大掛かりな改革には反対する事が多いです。
自分がその長にいる組織そのものが仕組みとして悪い状況を引き起こしているとは考えずにです。

この為、営業の改革というのは実に中途半端で、現状を本質的には変えず+αみたいなレベルで終わってしまい、結局はただ現場を混乱させただけで、経営者や企画部門の自己満足で終わってしまう事が多いです。

この点は、経営者がまず自ら不作為を生んでいる事に気付き、ウソと戦う為に、しっかりとした論理構築を行う必要があります。

さて少し脱線した為、長くなりましたが、今回上げた様な明確なデメリットが無い様な解決策は無いのか?また次回書きたいと思います。
posted by 金丸隆 at 19:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月11日

マーケティングと営業A

さて、前回営業組織に対して、マーケティング的な観点から施策を出しても結局は不実行になる事が多い。また結局その状況を生み出しているのは、営業パーソンの個人の資質というより、経営者自らが生み出してしまっているケースが多いと書きました。
今回は、経営者視点からどの様な解決策が考えられるか書いてみたいと思います。

まず、一番手っ取り早い解決方法があります。
そもそも、実行されない施策など、もう止めてしまう事です。
そんなアホな。と思うかもしれませんが、私はかなり本気で多くのケースでそうした方が良いとも考えています。
施策を出す際には、企画部あたりが結構な工数を使って策定しますし、現場の負荷も相当なものです。
結果として実行されない事でこれらに掛るマンアワーコストはドブにすてられる事になりますから、中途半端に実行もされない施策を乱発して、無駄なリソースを使う位なら、初めからそんな事は考えもせず。やらせもせず。の方が遥かに良いです。
もちろん、単に施策を出す事を止めるだけでは、問題の解決策としては答えになっていません。
マーケティング云々の前に、一度営業の体制をフルコミッション型にする(戻す)のも一つの手でしょう。

フルコミッション型の営業というのは、完全に実績と、報酬を連動させてオペレーションするやり方です。今でも保険業界のセールスなどはこのやり方が主流です。このやり方のメリットとしては、当然個々人の成果に対するモチベーションは高くなります。また余計な策を労する必要は無く組織運営は単純です。施策実行の際のインセンティブを高くする事で、ある程度マーケティング戦略と連動した動きも可能になります。成果を上げられない人は半自動的に退職していきますし、成果が上げられる人は高額な報酬を手にしますので、高いモチベーションを維持します。

デメリットとしては属人性が高くなり、情報共有や組織で対応すると言った動きは無くなってきます。また、成果を上げる為には、顧客の事を考えるより「如何に売り込むか」を基準に考えますので、いわゆる押売り型の営業が横行します。当然ですね。「如何にして数字を上げるか?」しか考えませんから。
駄目じゃないか?と思われるかも知れませんが、最近、色々な経営者の方から「基本的な営業マインドすら持っていない人間が多い」という話しを伺います。
果たして、私の方で現場の方をモニターしてみると「確かに・・・」と思った事は少なからずあります。私個人の考えを申し上げるならば、フルコミ営業も決して悪い面ばかりではありません。

「基本的な営業マインド」とは何なのかはここで細々は書きませんが、一言で言えば「プロ意識の欠如」でしょう。ここ10年来散々言われてきた、「属人営業から組織営業」、「結果よりもプロセス」、「科学的な営業」、「物売りからソリューション営業へ」。等々の言葉が中途半端に浸透してしまった為、この様な状態を引き起こしているのでは無いかと洞察します。
デメリットにはあえて目をつぶり、フルコミッション型の営業スタイルにする事で、本質的な問題が解決できる部分がある事は認識しておいて欲しい所です。「四の五の言うより、営業は売上を上げてナンボ」の世界ですね。

さて、上に書いた様なやり方は、ショック療法的であり、正直あまり良策とは呼べない事も事実ですので、また次回、別の解決策を書きたいと思います。
posted by 金丸隆 at 19:29| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月01日

マーケティングと営業@

開発や製造などの部門に居ると、マーケティングと営業というのは近い職種だと思われがちですが、実はその体質は全く異なる物です。ただ、ややこしい事に広義でマーケティング活動というのは事業そのものの事を指しますので、営業はマーケティング活動の一環であり、マーケティング組織の中の一チャネルに過ぎないという言い方もできます。
こういう事をストレートに営業パーソンに言うと「マーケティングなんて「広告・宣伝」しているだけじゃないか!俺達は会社の売上を作っているんだ」と怒られますが大いなる誤解で、逆にこの辺の感覚のズレこそが営業の改革が進まない原因の一つでもあり、企業が「適切なマーケティング活動」を行う際に一番の抵抗勢力となるは、開発や製造では無く、実は営業だったりします。

よくトップセールスマンで「この会社は俺が支えているんだ」的な発言をする人も居ますが、間違いです。
お客様がお金を支払っているのは、あくまで製品やサービスに対してであって、営業マンの営業行為に対して払っているいる訳ではありません。ですからトップセールスの人というのは効率良いPromotが出来てる人だという事になります。
会計上も営業掛るコストは原則「販売管理費」に計上され、原価には含まれません。
逆に言えば、営業という人間によるFaceToFaceのチャネルを使わなくても効率の良いPromotが出来るのであれば、いわゆる営業組織を作る必要は全くありません。事実、BTOのパソコンメーカや、ネットショップ、カタログ通販、TVショップなどなど、Webやカタログ、コールセンターなどを駆使して販売員や営業マン無しで事業を展開している企業は一杯あります。
いわゆるコンシュマー(一般消費者)向けのコモディティ化された商品だけだろう?と、思う方が居るかもしれませんが、BtoB領域でも、専門商社などでは、原則カタログとコールセンターだけで活動している企業もありますし、一品一様の特注品ばかりをコールセンターで受けて事業を展開しているメーカもあります。(その企業にしか作れないので、引合が来る)
特にネットが進化するにつれこの様な形(営業組織を持たない事業展開)は、今後あらゆる業種に広がっていくでしょう。もちろんこの様な事はくどく説明しなくてもある程度経営的視点を持った方なら常識だと思いますので、特に既存のFaceToFace営業活動の重要性を否定したい訳ではありません。

ただ、正しい経営的視点から物事を見ずに、目先の事を見過ぎてしまい、「俺が会社を・・・」的な発想をしてしまうのは、改革を妨げる要因となります。

さて、広義でのマーケティング活動という視点から離れ、企業内の機能的な面から組織を見ると、最初に書いた様に実はマーケティングと営業というのは考え方が根本的に異なっています。活動の価値基準が違うと表現した方が良いでしょうか。
一番の違いは時間軸の違いです。一般的なマーケティング組織※というのは、かなり中長期な視点で物事を考えます。1〜3年位と思えば良いでしょうか。マーケティング組織というのは「将来のお客様を相手にしている」と表現できます。一方の営業組織というのは、月や半期という単位、長くて年度という単位で物事を考えます。営業組織は「今のお客様を相手にしている」と表現できます。
※単にDMを出すとか、アウトバウンドコールをするだけのマーケティング組織の事ではありません。この様な組織は機能的に見れば、むしろ営業支援と呼んだ方が近いでしょう

先に書いた、「今のお客様」に対してもネットやコールセンターを駆使して対応するというケースを除けば、どちらも企業の活動において重要な機能である事は間違い無く、「将来のお客様」に対してのPromotionばかりで、今欲しいと言っているお客様への対応がおざなりでは売上は上がりませんし、逆に「今のお客様」ばかりに目を向け「将来のお客様」を作っていく活動をしなければ、直ぐに事業は尻すぼみになります。
当り前の話ですが、現実問題としてこの二つの組織が上手く連携できない事が課題になっているケースは多いです。例えばTVドラマなどで、若手の主人公が画期的な企画を考えても、営業の人から「こんな物売れるか!」って相手にされず苦労する。なんてシーンがあります。「将来のお客様」のニーズは解り辛く、ある意味未知の領域ですからどうしても数字を作らないといけない営業の人達は、「今のお客様」を基準に物事を判断してしまいます。「営業は保守的」と言われるのもこのせいでしょう。

特にBtoB企業の多くは、マーケティング組織を作らず「将来のお客様」も「今のお客様」も営業組織が担っている事が多いので、この場合どうしても営業の理論が優先されてしまいます。即ち「将来のお客様」を見ずに「今のお客様」ばかりを見てしまう現象です。

解り易い例で言うならば、マーケティング活動を行う際にターゲティングを行う事は基本中の基本です。どの市場、どのお客様をターゲットにするか?ですね。BtoBに特化して書きますが、顧客が法人企業であれば、教科書的に言えば、自社の商品を買ってくれる要素が高い顧客。即ち、購買ポテンシャルの高い顧客で、且つ自社のシェアが低い顧客は、一番のターゲットになります。常識ですね。

しかし、これが営業的発想で考えるとどうも違ってきます。営業にとって重要なのは「今直ぐ買ってくれそうな顧客」であって、必ずしもポテンシャルが高い顧客がターゲットとなる訳ではありません。人的ネットワークも殆ど薄く、競合がガッチリと抑えてしまっている顧客に通って、相手にもされず骨を折る位なら、購買ポテンシャルはさほど無くても、人的ネットワークもしっかりと構築できていて、予算を取ってくれそうな目の前の顧客の方を重要視してしまいます。
もちろん、一部のトップセールスになって来ると、目の前の顧客からしっかりと数字を上げながら、将来の顧客への種まきもバランス良く行う事が出来る為、常に安定した売上を上げる事ができるのですが、こういう稀な人材のみを頼りに経営をする事は頂けません。だからこそ、組織として決められた「重点先」「ターゲット先」を優先して回れ!と施策を出して檄を飛ばす訳なのですが、これは理想論として正しくても現実論として間違えてしまっています。
実際問題、期末になって売上が大幅未達になりそうだとどう指示がでますか?(出しますか?)殆どの営業組織では「兎に角なんでも良いからあと○億円積め!」ってやります。
期末には顕著になりますが、最近は決算のサイクルも短くなってますから、4半期、月間という単位で、数字を求められます。その状態で「将来の顧客」の事を考えて動けと指示をされても出来る訳ありません。いわゆる「計画のグレシャムの法則」になにより陥り易いのが営業組織であり、それを招いている原因は、口では長期的な視点と言いながら、こと営業に関しては、ついつい目先の数字ばかりを追わせる指示を出してしまう経営者に問題があると言っても良いかもしれません。現場の営業担当者の資質を嘆いている経営者が多いですが、どちらかというと経営者が自ら不作為を生んでしまっている事の方が多いです。

この問題をどう解決すべきかという話ですが、とは言え、実際に経営する上で「売上」は全ての源です。「売上」が上がらなければ、利益もへったくれもありません。目先の売上を捨ててまで中長期での視点に立てと指示するのは、容易ならざる決断ですし、現実問題としてそれが許される状況では無いという場合も多いでしょう。

少し長くなりそうなので、また次回、この問題の解決する方法を書いていきたいと思います。
posted by 金丸隆 at 12:07| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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