2010年06月01日

マーケティングと営業@

開発や製造などの部門に居ると、マーケティングと営業というのは近い職種だと思われがちですが、実はその体質は全く異なる物です。ただ、ややこしい事に広義でマーケティング活動というのは事業そのものの事を指しますので、営業はマーケティング活動の一環であり、マーケティング組織の中の一チャネルに過ぎないという言い方もできます。
こういう事をストレートに営業パーソンに言うと「マーケティングなんて「広告・宣伝」しているだけじゃないか!俺達は会社の売上を作っているんだ」と怒られますが大いなる誤解で、逆にこの辺の感覚のズレこそが営業の改革が進まない原因の一つでもあり、企業が「適切なマーケティング活動」を行う際に一番の抵抗勢力となるは、開発や製造では無く、実は営業だったりします。

よくトップセールスマンで「この会社は俺が支えているんだ」的な発言をする人も居ますが、間違いです。
お客様がお金を支払っているのは、あくまで製品やサービスに対してであって、営業マンの営業行為に対して払っているいる訳ではありません。ですからトップセールスの人というのは効率良いPromotが出来てる人だという事になります。
会計上も営業掛るコストは原則「販売管理費」に計上され、原価には含まれません。
逆に言えば、営業という人間によるFaceToFaceのチャネルを使わなくても効率の良いPromotが出来るのであれば、いわゆる営業組織を作る必要は全くありません。事実、BTOのパソコンメーカや、ネットショップ、カタログ通販、TVショップなどなど、Webやカタログ、コールセンターなどを駆使して販売員や営業マン無しで事業を展開している企業は一杯あります。
いわゆるコンシュマー(一般消費者)向けのコモディティ化された商品だけだろう?と、思う方が居るかもしれませんが、BtoB領域でも、専門商社などでは、原則カタログとコールセンターだけで活動している企業もありますし、一品一様の特注品ばかりをコールセンターで受けて事業を展開しているメーカもあります。(その企業にしか作れないので、引合が来る)
特にネットが進化するにつれこの様な形(営業組織を持たない事業展開)は、今後あらゆる業種に広がっていくでしょう。もちろんこの様な事はくどく説明しなくてもある程度経営的視点を持った方なら常識だと思いますので、特に既存のFaceToFace営業活動の重要性を否定したい訳ではありません。

ただ、正しい経営的視点から物事を見ずに、目先の事を見過ぎてしまい、「俺が会社を・・・」的な発想をしてしまうのは、改革を妨げる要因となります。

さて、広義でのマーケティング活動という視点から離れ、企業内の機能的な面から組織を見ると、最初に書いた様に実はマーケティングと営業というのは考え方が根本的に異なっています。活動の価値基準が違うと表現した方が良いでしょうか。
一番の違いは時間軸の違いです。一般的なマーケティング組織※というのは、かなり中長期な視点で物事を考えます。1〜3年位と思えば良いでしょうか。マーケティング組織というのは「将来のお客様を相手にしている」と表現できます。一方の営業組織というのは、月や半期という単位、長くて年度という単位で物事を考えます。営業組織は「今のお客様を相手にしている」と表現できます。
※単にDMを出すとか、アウトバウンドコールをするだけのマーケティング組織の事ではありません。この様な組織は機能的に見れば、むしろ営業支援と呼んだ方が近いでしょう

先に書いた、「今のお客様」に対してもネットやコールセンターを駆使して対応するというケースを除けば、どちらも企業の活動において重要な機能である事は間違い無く、「将来のお客様」に対してのPromotionばかりで、今欲しいと言っているお客様への対応がおざなりでは売上は上がりませんし、逆に「今のお客様」ばかりに目を向け「将来のお客様」を作っていく活動をしなければ、直ぐに事業は尻すぼみになります。
当り前の話ですが、現実問題としてこの二つの組織が上手く連携できない事が課題になっているケースは多いです。例えばTVドラマなどで、若手の主人公が画期的な企画を考えても、営業の人から「こんな物売れるか!」って相手にされず苦労する。なんてシーンがあります。「将来のお客様」のニーズは解り辛く、ある意味未知の領域ですからどうしても数字を作らないといけない営業の人達は、「今のお客様」を基準に物事を判断してしまいます。「営業は保守的」と言われるのもこのせいでしょう。

特にBtoB企業の多くは、マーケティング組織を作らず「将来のお客様」も「今のお客様」も営業組織が担っている事が多いので、この場合どうしても営業の理論が優先されてしまいます。即ち「将来のお客様」を見ずに「今のお客様」ばかりを見てしまう現象です。

解り易い例で言うならば、マーケティング活動を行う際にターゲティングを行う事は基本中の基本です。どの市場、どのお客様をターゲットにするか?ですね。BtoBに特化して書きますが、顧客が法人企業であれば、教科書的に言えば、自社の商品を買ってくれる要素が高い顧客。即ち、購買ポテンシャルの高い顧客で、且つ自社のシェアが低い顧客は、一番のターゲットになります。常識ですね。

しかし、これが営業的発想で考えるとどうも違ってきます。営業にとって重要なのは「今直ぐ買ってくれそうな顧客」であって、必ずしもポテンシャルが高い顧客がターゲットとなる訳ではありません。人的ネットワークも殆ど薄く、競合がガッチリと抑えてしまっている顧客に通って、相手にもされず骨を折る位なら、購買ポテンシャルはさほど無くても、人的ネットワークもしっかりと構築できていて、予算を取ってくれそうな目の前の顧客の方を重要視してしまいます。
もちろん、一部のトップセールスになって来ると、目の前の顧客からしっかりと数字を上げながら、将来の顧客への種まきもバランス良く行う事が出来る為、常に安定した売上を上げる事ができるのですが、こういう稀な人材のみを頼りに経営をする事は頂けません。だからこそ、組織として決められた「重点先」「ターゲット先」を優先して回れ!と施策を出して檄を飛ばす訳なのですが、これは理想論として正しくても現実論として間違えてしまっています。
実際問題、期末になって売上が大幅未達になりそうだとどう指示がでますか?(出しますか?)殆どの営業組織では「兎に角なんでも良いからあと○億円積め!」ってやります。
期末には顕著になりますが、最近は決算のサイクルも短くなってますから、4半期、月間という単位で、数字を求められます。その状態で「将来の顧客」の事を考えて動けと指示をされても出来る訳ありません。いわゆる「計画のグレシャムの法則」になにより陥り易いのが営業組織であり、それを招いている原因は、口では長期的な視点と言いながら、こと営業に関しては、ついつい目先の数字ばかりを追わせる指示を出してしまう経営者に問題があると言っても良いかもしれません。現場の営業担当者の資質を嘆いている経営者が多いですが、どちらかというと経営者が自ら不作為を生んでしまっている事の方が多いです。

この問題をどう解決すべきかという話ですが、とは言え、実際に経営する上で「売上」は全ての源です。「売上」が上がらなければ、利益もへったくれもありません。目先の売上を捨ててまで中長期での視点に立てと指示するのは、容易ならざる決断ですし、現実問題としてそれが許される状況では無いという場合も多いでしょう。

少し長くなりそうなので、また次回、この問題の解決する方法を書いていきたいと思います。
posted by 金丸隆 at 12:07| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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